「遺言」とは、

●死後の法律関係を定める、

●最終の意思表示であって、

●遺言者の死亡によって法律効果を発生させるもの

です。

 

死亡によって効果が発生するのですから、

その内容を実現するときは、書いた者(遺言者)はこの世にいませんので、

内容や意図が不明確であっても、「これ、どういうこと?」と聞くことはできませんし、

間違った記載があっても、訂正することはできません。

 

ですので、

法律は、遺言の作成において、一定の方式に従って作成することを定めています。

 

では、

遺言方式の分類、特徴について簡単に説明しましょう。

遺言には、

大きく分けて「普通方式」と「特別方式」があります。

 

「普通方式」とは、一般的な、平常時に作成されることを予定した遺言の方式です。

「普通方式」には、自筆証書遺言 公正証書遺言秘密証書遺言があります。


「特別方式」とは、特殊な状況下において作成されることを予定した遺言の方式です。

「特別方式」には、危急時遺言、隔絶地遺言、があります。

 

この危急時遺言は、

病気などで死期が近づいている場合に作成する一般危急時遺言と、

船舶で遭難した場合に作成する難船危急時遺言に、分類されます。

 

また、隔絶地遺言も、

伝染病により行政処分で交通を絶たれたなど、隔離された場合の一般隔絶地遺言と、

航海中の船舶で作成する船舶隔絶地遺言、に分類されます。

 

これら「特別方式」は、特殊な状況下での意思表示ですので、

証人の数、必要となる立会い者(筆記者、船長、事務員、警察官など)、

作成後の家庭裁判所における「確認」手続、危難が去った場合の効果など、

「特別」な要件、効果が定められています。

 

 

では、

平常時に作成されることを予定した遺言=普通方式である、

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言について、簡単にご説明します。

遺言の全文、年月日、氏名を自署し、押印して作成するものです(ワープロ打ちは不可※)。

※平成31年1月13日以降に作成する自筆証書遺言につき、財産目録の部分に限り、

 自署によらない方法によっても可能となりました。

 例えば、パソコンで作成したり、預貯金なら通帳の写し、不動産なら登記事項証明書を

 添付することも可能です(但し、各ページに署名、捺印を要します)。

 

−長所−

○遺言の存在、内容を秘密にできる。

○費用がかからない。

など。

−短所−

●方式違反、内容不明瞭で無効、紛争のおそれ

●隠匿、改変、破棄、紛失のおそれ

●死後家庭裁判所での「検認」が必要

など。

遺言者が遺言の趣旨、内容を公証人に対して口授(口頭で述べること※)し、

 公証人が筆記したものを読み聞かせ、遺言者、証人が署名押印して作成するものです。

 (※通訳や筆談によることも可能です)

 

−長所−

○方式違反、内容不明瞭で無効、紛争のおそれや、隠匿、改変、破棄、紛失のおそれがない。

○死後家庭裁判所での「検認」は不要。

など。

−短所−

証人2人が立会い、秘密にできない。

公証人の手数料など費用がかかる。

など。

遺言者が署名押印して封印した封書を公証人に対して提示し、

公証人がその封筒に日付などを記載して、遺言者が証人と共に署名押印して作成するもの。

 

−長所−

○内容を秘密にできる。

○改変のおそれがない。

など。

 

−短所−

●方式違反、内容不明瞭で無効、紛争のおそれ

●隠匿、改変、破棄、紛失のおそれ

●死後家庭裁判所での「検認」が必要

●証人2人の立会いが必要

など。

ここで自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合に必要となる、

「検認」手続について簡単に説明します。

 

「検認」とは、

偽造変造を防止し、保存を確実にするために、

家庭裁判所において行われる手続のことで、

遺言者の死後、保管者、発見者は、

家庭裁判所に対し、

相続関係を証する戸籍等を添付して、

申立をしなければなりません。

 

家庭裁判所は、

立会い期日を指定して、相続人利害関係人を呼び出し、

その期日に証明文を付して原本を申立人に返却し、

その写しを家庭裁判所に保管します。

有効性を判断するものではありません。

 

公正証書遺言の場合には、

この「検認」手続は不要です。

「普通方式」のうち、

秘密証書遺言は、

よく言えば、自筆証書遺言と公正証書遺言の「いいとこどり」ではありますが、

記載が正しくできているのか不安なまま、見つけてもらえるのか不安なまま、

でも、公証人、証人の関与は必要で、

さらに、家庭裁判所での「検認」が必要である

ということから、自筆証書遺言や公正証書遺言より利用されるケースは少ないと思われます。

 

ですので、

自筆証書遺言と公正証書遺言を比較します。

 

特徴をひとことであらわすと、

自筆証書遺言は「より簡便」、公正証書遺言は「より確実」、

と言えるでしょう。

 

どちらをとるかは作成者の判断ではありますが、

重要な財産に関する大切な意思表示ですので、

費用をかけてでも確実な方法、

つまり、公正証書遺言の作成をお勧めします。

 

ただ、

すぐには決めることができないという場合は、

まず、自筆証書遺言を作ってみることからお勧めします。

 

自筆証書遺言を作成する際の、

不動産の表示など正確な記載方法についての支援(登記事項証明書取得など)も、

お手伝いいたします。

 

公正証書遺言作成の場合は、

作成したい遺言の趣旨、内容をお聞きし、

文案の作成、公証人との打ち合わせなどをお手伝い致します。

遺留分(いりゅうぶん)は、

相続人に与えられた最低限の相続権で、

一定の範囲の相続人に対して、遺産の一定割合について相続権を保証する制度のことです。

 

遺留分の権利者は、

配偶者と子、直系尊属(父母、祖父母)で、兄弟姉妹には遺留分はありません。

 

遺留分権利者は、

遺留分に見合う財産が遺されなかった(遺留分を侵害された)とき、

取り戻し請求(遺留分減殺請求)をすることができます。

法律の効果は認められませんが、

遺言には「付言事項(ふげんじこう)」として、

「特別な思い」、「願い事」、「伝えたいこと」

など、

記載することができます。

 

相続人に対する感謝の気持ち、

メッセージなどを記載しておくことで、

○相続人間の感情の対立を防いだり、

○遺言内容に対する不満を和らげる

などの効果が期待できます。

いずれの遺言においても、遺言執行者を指定することができます。

 

遺言執行者とは、

遺言の内容を実現するために、実現に必要な権利義務を有し、財産等の管理処分を行う者

のことです。

遺贈などをする場合は、

遺言執行者を定めておくことをお勧めします。

※遺言執行者が必須のケースもあります。

 

当職は、

いずれの方式においても、遺言執行者への就任もお受けいたします。

 

遺言執行者の指定については、

司法書士井本誠治事務所にお気軽にご相談ください。

遺言に書く内容については、制限はありません。

ですから、

家族への感謝など自分の伝えたい気持ちを自由に書いておくことができます。

 

しかし、

遺言の内容に法的効果をもたらすことが出来る事項は主として、

相続に関すること、

たとえば、

●法定相続分と異なる相続分を定めたり、

●具体的な遺産分割の方法を定めたりすることができます。

 

次に、

財産の処分に関する事項として、

●あなたの財産を法定相続人以外の者に与えること−これを遺贈といいます−、

●慈善団体に寄付をする指示をすることができます。

 

さらに、

身分に関する事項として、

●婚姻外の子供を認知したり、

●未成年の子について後見人を指定しておくことができます。

 

このほか、

相続手続を信頼できる人に円滑に進めてもらうために、

●遺言執行者を指定することができます。

 

逆に遺言でできない事項は、

●結婚、離婚、養子縁組、離縁というような基本的には双方の合意を要する

身分関係を定めることはできません。

 

また、

あなたに借金がある場合に、たとえば、

特定の財産を相続させる人にその返済を負担させると定めたとしても、

●法的な拘束力はなく、貸し手である債権者に対して主張することはできません。

但し、債務の承継者を指定しておいて、

債権者、例えばお金を貸している人がその指定に同意すれば有益な場合はあります。

 

では、

遺言は作っておいた方がいい場合とは、どうのようなときでしょうか。 

まず、遺言が特に必要な場合をご説明します。 

 

1.相続人がいない−亡くなった後の相続人が一人もいない−ケース

この場合、遺言がないと、

 ①相続財産管理人選任の申立

 ②相続財産管理人選任

 ③債権者、受遺者等への公告、相続人捜索の公告(一定期間処分ができない)

 ④特別縁故者(内縁の妻など)による財産分与の申立

 ⑤国庫へ帰属

 という流れで、最終的には国庫−国−に財産を引き渡すことになります。

 

お世話になった人に財産をあげたい−遺贈したい−場合などは、

必ず、遺言を作成してください。

 

次に、

2.内縁関係、事実婚関係である、遺言者に内縁の妻、夫がいる場合です。

日本の現行法は、

 ①法律婚主義(夫婦の実体+婚姻届)

 ②内縁の妻に相続権はない

という取り扱いですので、

内縁の妻に遺贈をしたい場合は、

必ず、遺言を作成すべきでしょう (但し、子や直系尊属がいる場合には遺留分に注意)。

 

次に、

3.先に亡くなった子の配偶者に引き継がせたい場合です。

例えば、

長男死亡後も、長男の両親の世話をしている長男の妻がいる場合に

父母に相続が発生した場合などです。

日本の現行法では、

 ①長男の妻に長男の両親の相続権はない

 ②長男の子がいればその子は代襲相続人として相続するのですが、

子がなく、かつ住んでいる家の名義が親の名義であれば他の子が相続することになる、

というのが取り扱いですので、

両親から長男の妻に遺贈をしたい場合は、

遺言をぜひ作成すべきです (但し、他の子の遺留分に注意)。

 

次に、

4.夫婦の間に子供がいない場合です。

日本の現行法による取り扱いとしては、

 ①子供も直系尊属もいなければ被相続人の兄弟姉妹に相続権あり、

 ②配偶者の兄弟でもすんなりとは遺産分割に協力してくれない場合がある、

 ③遺産分割を受けていれてくれても、それなりの代償が必要な場合がある、

というのが現実です。

 特に、

 居住不動産がある場合は、

 実際に不動産を分けることができないので(但し共有というのは可能)、

 場合によっては、価値に見合った額の代償分割金を支払う必要も出てきます。 

こういう場合は、ぜひ、妻に相続させる旨の遺言を残してあげるべきでしょう。

特に、

兄弟姉妹に遺留分はありませんので有効です。

 

ほかにも、

5.推定相続人の中に行方不明者がいる場合は、

遺言を作成していないと、 

 ①行方不明者も遺産分割協議を有効にするには参加が必要なので、

 ②不在者財産管理人選任の申立て(費用、期間)を要し、

 ③選任された管理人との間で法定相続分に見合う分割をして、

 ④その後、原則的には失踪宣告(7年)をして、

 ⑤失踪宣告されると死んだとみなされ−親族内には感情的な抵抗も強い−、

 ⑥そのうえで、再度遺産の分割を実施

することになります。

行方不明者がいて今後も戻ってくる可能性が低いのであれば、

他の者に相続、遺贈することを考えてみるのもよいでしょう。

但し、行方不明者が帰来した場合には遺留分減殺の可能性はあります。

 

さらに、

6.家業を継ぐ子供に事業用財産を相続させたい場合は、

遺言がないと、

 ①法定相続で事業用財産が分散の可能性あり、

 ②結果、事業存続の危機もあり得る

そこで、

事業承継者に事業用財産は相続させる、

他のものには事業用財産以外のものを相続させるという遺言の作成が有効となります。

 

また、

7.現在別居中で事実上の離婚状態にある配偶者がいる場合などは、

遺言がないと、

 ①別居中であっても法律上の妻であれば相続権あり、

  子供がいなければ両親もしくは兄弟姉妹と配偶者が対立

 ②あげたくないという意思も通らない。

そこで、

妻には一切相続させない、

もしくは遺留分を侵害しない最低限の相続とするなどの遺言の作成が必要となります。

 

ほかにも、

8.再婚したことにより、例えば先妻の子供と、後妻がいる場合は、

法定相続となると、

 ①先妻との間の子と、後妻が相続人となり

  −通常は、後妻と、先妻との間の子が財産について話し合うなどは、結構大変−

 ②後妻が居住する居住用不動産がある場合などは、

  先妻の子に理解と協力を求めることが必要となる。

後妻には居住用財産を相続させ、

先妻との間の子にはその他の財産を相続させるという遺言が望ましく、

遺留分を害しない程度で相続割合の指定などをするのもよいでしょう。

 

以上が代表的な遺言をした方がよいとされる例ですが、

ほかにも活用したいケースはあります。 

上記のほかにも是非、遺言の活用を検討していただきたいものとして、

 

●主な財産が居住用の不動産である。

 −自分の亡き後の配偶者の生活が心配な場合−

 ①法定相続は、妻は1/2、子供は1/2÷人数となる、

 ②既に子供は独立して生活をしている場合には、

妻に全財産を、

または、

妻に多く遺す、特に居住用不動産を指定する場合に遺言するとよいでしょう。

通常、

いずれは子供に相続されるのですから、

妻と子が遺産分割協議をすることなく、

妻一人のものにしてあげたいというのもよいのではないでしょうか。

 

あと、

●子供が未成年の場合、

 法定相続では、妻と子が相続人となり、

 遺産分割協議をするには、子の親権者である妻と、子の利益が相い反する、

 いわゆる利益相反関係となり、

 有効に手続をするには、

 家庭裁判所に特別代理人の選任が必要となります。

 このような場合も妻に相続させる遺言を遺しておくこととよいでしょう。

 

また、

「特に必要」として事業承継でも記載しましたが、

●この子にはこの不動産、この子には預金といった特定の財産をあげたい場合にも、

 遺言を活用すべきでしょう。

 

ほかにも、

●公益事業に役立てたい、寄付したいと言う場合や、

●世話になった知人、友達に一部をあげたいという場合、

●子供は憎たらしいが、かわいいから孫にあげたいとき、

●菩提寺に永代供養を頼みたいときなどが、

 遺言により実現できるものとして、遺言を活用したいケースといえます。

※こうした遺贈等を実現するためには、遺言執行者の指定をしておかれることを強くお勧めいたします。

司法書士井本誠治事務所はは、

遺言の文案作成、

 公証人との事前打ち合わせと予約、

遺言作成時の証人立会い、

 遺言執行者への就任(予定者として受任)のほか、

 不動産など重要な財産の特定に要する書面の収集(登記事項証明書など)、

などをお手伝いしております。

 

遺言作成は、その作成時において、

自分の行為の結果を判断できる精神的な能力=意思能力が必要です。

このことから、

いつ、どのうような状態で作成されたかが問題となるケースがあり、

せっかく紛争を防ごうと思って作成した遺言が紛争の種になっては残念です。

 

ですので、

元気なうちに、しっかりしているうちに、作成されることをお勧めします。

 

また、

遺言は何度でも書き直すことができます。

「書こう!」と思ったときに、作成してみてはいかがでしょうか。

 

公正証書遺言はたいそうだから、

とりあえず、「自筆証書遺言を作成してみたい。」という方でも、

お気軽にご相談ください。

 

 

公正証書遺言、自筆証書遺言については、

司法書士井本誠治事務所にお気軽にお問い合わせください。

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